小説を選ぶ時に私は長編を選びがちです。と言っても、何巻にもわたっているものはというと、そこまでは望みません。持ち運びやすい文庫本なら1冊が一つの物語になっているものが好きなんです。特に理由があるわけじゃないけど、本屋さんで「これ、面白そうかな」と思って、パラパラと中を見て、目次を見て、短編集だとちょっとがっかりした気分になるんです。1冊が1つの物語での完結を求めているのかもしれません。だから、その選択は重要なんです。読み始めたけど意外にもその世界に入り込めなかった時には、最後まで読むのにものすごく時間がかかったり、なかなか進まないがために途中で放置してしまって、代わりに他のものを探しだすなんてことになりかねません。
でもたまに、短編集だけど良さそうって思えるものに出会うことがあります。先日がそうでした。しばらく、少し重めの長編にどっぷりハマっていたからでしょうね。ちょっと気分を変えたいって無意識に感じていたのかも。でも、その本の冒頭にめずらしく著者の前書きがあって、自分がその本を書いたいきさつが掲載されていたんです。初めにそれを読んだら、さらにその小説に興味が湧いてきて早く読みたくて仕方なくなったんです。それなのに、意外にもその前書きが長くて……「まだ始まらないの?」なんて思ってしまったんですから。きっと、それが戦略だったのかも。読み手の心がわかっていますよね。今、ようやく一つ目の物語が始まったところです。これからの行方がすごく楽しみです。