とある大型本を手放そうか迷っています。私の大好きな海外ミステリー小説の、とみに有名なエピソードのみを抜き出して収録したもので、愛蔵版として非常に高価な金額で売り出されたものでした。各エピソードになぞらえた豪華装丁がなされていて、読むのも触れるのももったいないと感じる余り、化粧箱から取り出す時は薄手のゴム手袋を嵌めていました。もちろんじっくり読むようなことはせず、ただ眺めては悦に入っていました。
ファンとしては是非とも押さえておかなければならない逸品、と考えて買ったこの本……。しかし時が経つにつれて、「実は要らないものだったんじゃないか?」という気持ちが芽生えてきました。素敵なものを所有しているという満足感はあるものの、読み物としては全く扱っていないなあ、と。
そのミステリー小説への愛は未だに薄れていませんし、普段読む用がボロボロになったらその都度買い換えてきました。でもこの愛蔵版はそうもいかないわけで……。だからこそ愛蔵版なわけですが。
いやはや、年月が経つことによる価値観の変化というのは面白いですね。当時だったら手放すなんてこと、絶対考えなかったでしょうから。しばらくは目の届かないところに保存しておいて、ある一定の時期が来た時の自分の心持ちで判断しようと思っています。