私は空を見るのが好きでよく見ています。というより、つい見てしまうって言う方が正しい表現かも。玄関から出た時、駅に向かって歩いている時、ワンコのお散歩をしている時、どんな時もなんとなく見上げます。そして、その時の空の色や雲の流れに色んな思いを重ねます。
先日、車で家に戻ってきた時、ちょうど町が夕闇に包まれたところでした。荷物を抱えて車から降りた私の目の前に、今まで見たことがないような空が広がっていたんです。その日は一日中雨でようやく上がったところだったから、まだ一面雲で覆われていました。もう闇に包まれてしまってるから、雲も昼間のそれとは違っていつものように白くは見えません。でも、全体が薄いグレーに見えていました。その色もちょっと意外で、日が暮れたばかりでまだ夜が新しいからかな、なんて思っていました。でもグレーの先、ちょうど斜め前方に帯のように見える部分があったんです。濃い青というか、黒に近い青。ぽっかり空が割れているように見えました。なんて幻想的な光景かと立ち止って見てしまいました。でもふと、いつかこれとよく似た物を見たような気がしたんです。初めて見る光景なのになぜだろうと家に入ってからも考えていて……そしたら思い出したんです。本棚にある一冊に小説を。そして、何がっていうと、空と割れている部分の色合いは逆になっているけど、その本の装丁こそ私が見た空に重なるものがあったんです。とても不思議な気持ちになりました。だから、もう一度眺めずにはいられませんでした。その本を持って、今度はベランダから。