この前、読んだ小説は、事故で命を落とした主人公の魂が他の人の中に入ってしまうというストーリーでした。交通事故にあった瞬間、「あーっ」と叫びながら、幼い頃に父親と遊んだことや初恋や楽しかった学生時代などが次々と頭の中に浮かんできました。もちろん、フィクションだから事実ではないんだけど、その光景が読んでる私にもはっきりと見えました。だから、人が命の危機に直面したときって、きっとそうなんだろうって思えたんです。
でも、その時、私も似たような体験をしたことがあることを思い出しました。それは学生時代のことです。バイト先の店長とバイト仲間みんなで初日の出を見に行ったんです。一台のワゴン車に乗り込んで、深夜に出発しました。日の出がキレイに見える場所を誰かが調べてくれていて、山道をグングン上がって行きました。山の上で海からの日の出を見る計画だったんです。でも、あいにくの天候で途中から雪がどんどん降ってきて、結局初日の出は見れなかったんです。それでも、みんなで出かけたことは楽しかったものです。でも、帰り道。山から下りているときにワゴン車が大きくスリップしてハンドルが効かない状態になったんです。その時のことを今でもよく覚えています。眼下に海が見えて、身体には崖から海に向かってフワーッと落ちて行く感覚がありました。絶対に落ちる、もう助からないと思っていました。不思議なのは、その時の様子が本当にスローモーションのようだったということです。けど、幸いにも道路わきの木にぶつかって止まったんです。目を開けた時に落ちていなかったことが不思議なくらいでした。思い出しただけでゾッとします。
小説は交通事故から物語が始まるんだけど、現実はダメです。やっぱり、そんなのは小説の中だけがいいですよね。